金属製フレキシブルチューブとベローズの製造販売を手がける大阪ラセン管工業株式会社。小泉星児社長は自社の強みを「技術力」と言い切ります。一方で、一般的に企業サイトに掲げられがちな理念・ビジョンは「ない」と明言。では、何を軸に経営し、何を世の中に届けようとしているのか。番組出演を通じて生まれた変化や、万博出展からの製品化、新工場計画まで、率直な言葉で語っていただきました。
譲れないのは品質への真面目さ
――御社の事業内容を端的に教えてください。
事業内容は、金属製のフレキシブルチューブとベローズの製造販売になります。
――御社の強みを一言で言うと。
本当に一言で言うと技術力だと思います。
――経営をするうえで大切にしていることは何でしょう。
少なくとも大阪ラセン管工業においては、品質に対してはとことん真面目にやる、ということです。昔のCMみたいで格好よくはないんですけど、要するに「真っ向勝負」という気持ちに近いですね。
品質保証というのは、結局はクレームの場面で問われます。液体が漏れたとか、何かが起きたときに「どうなってるの?」と言われる。機能部品の一つだから大したことない、と見られることもある中で、同業他社だと「代品を送りますね」で終わるケースも多いと思います。でも、うちは「漏れないようにできるかどうか」は別としても、今より良い方法を必ず持たせて、改善して、新しいものをお納めする。そういう方針です。
番組出演で生まれた緊張感と、社内外に起きた“見られる”変化
――番組出演が決まったきっかけと、当時の思いを教えてください。
きっかけは制作側からお電話をいただいたことです。いくつか番組のオファーがある中で「これは良さそうだ」と判断して出演を決めました。当時は別の方が進行を務められていて、そのタイミングで参加させていただいた、という流れです。
――社内外の反響はありましたか。
結構見ていただいています。私のことを分かった上で見てくれる人もいれば、アポイントの前に調べて「見てますよ」と言ってくださる方もいます。動画をたまたま目にして「びっくりした」という知り合いからの連絡もありました。また、ある回の内容については、私の母校の関係者の間で話題になったこともありました。
――採用面への影響はどうでしょう。
「これで応募が増えた」という単純な話ではないのですが、募集してエントリーがあって面接をすると、だいたいの方が動画を見てくれている印象があります。面接前に会社のことを調べるのは自然なことだと思いますが、その導線の中で出演動画にたどり着き、私が話している様子を見た上で来てくださる方が多いです。
番組出演に限らず、SNSや動画、掲載記事などを見て、会社をある程度理解してから面接に臨んでくださるので、面接がスムーズになる感覚があります。
また入社後に「思っていた会社と違った」と感じる方が減っている気がしていて、結果として離職率が低くなっているのは、こうした露出が一つプラスに働いているのかもしれません。
万博出展から“製品化”へ。新製品開発の二軸と、スピード感
――現在注力しているプロジェクトや新しい挑戦はありますか。
具体的には二つあります。
現在注力している取り組みの一つが、新製品の開発です。大阪・関西万博で披露した技術の製品化を進めており、その一つが超極細の金属製フレキシブルチューブ「ナノフレックス」です。同社はこれまで、世界最小径の金属製フレキシブルチューブ「マイクロミニフレックス」でギネス世界記録に認定されていますが、ナノフレックスはそれよりさらに細い内径0.9mmを実現。2026年1月30日に販売を開始しました。
もう一つは、折りたたむことができる構造のフレキシブルチューブの開発です。折り紙のように折りたたみが可能な構造を持つもので、現在は今年9月末までの製品化を目標に進めています。
――なぜ「今年の9月末」なのでしょう。
万博の出展が10月7日だったので、その1年以内に、ということです。誰かに言われたわけじゃないですけど、そうするべきだと思う。万博に出展するときの条件が、「世の中にまだ出してないもので、世界初お披露目で、かつ製品化・商品化できるもの」だったんです。だから、万博開催以降は遅滞なく、すぐさま製品ができるものを、というのが大前提。1個はちょっと手間取りますけれども、何とかします。2つとも、出したものをそのまま世に出すことを目標にしています。
――その取り組みへの評価や反応はありましたか。
万博での展示には多くの企業が参加していました。私たちが出展したプロジェクトには、約400社ほどの企業が関わっています。ただ、その中で展示した技術が実際に製品化された例は、まだ多くはないようです。大阪商工会議所の方のお話でも、具体的に製品として世の中に出た事例はまだあまり把握されていないとのことでした。そのため、今回私たちが進めている製品化は、もしかすると比較的早い事例になる可能性があります。
また、大阪商工会議所で万博関連プロジェクトの総括が行われる際、その場で当社の取り組みや製品について紹介していただけると聞いています。そうした点でも、今回の取り組みは非常に前向きに受け止めていただいていると感じています。
工場刷新と、社内外への約束。「楽しく働ける会社」であるために
――会社として、ほかにも進めている挑戦はありますか。
静岡にあるメイン工場を刷新しています。全て建て替えます。2028年の夏頃までには全部新しくなるという工事を進めている途中です。
――社内に向けて、伝えたい指針はありますか。
とにかく楽しく仕事をしてほしいですよね。いい環境であるな、と思っておいてほしい。うちの会社はいい会社だ、と思っておいてほしい。社員旅行など企画への参加率は8割以上で、旅行会社さんから「極めて高い」と言われました。普通は6割切り、5割切ることが多いと。そういう意味では、それなりに楽しくやってくれてるんじゃないですか。
――社外に向けては、どんな思いを大切にしていますか。
信頼ですね。引き続きご信頼いただいて、良いものを納めさせていただきますので、いろんな分野でお手伝いさせていただけるのが一番いい。もっともっといろんな新分野に挑戦したいので、ということです。
For JAPANという番組について率直なご感想をお願いいたします!
かなり多くの方、しかもこれまで出会ったことのない不特定多数の方に、自分の考えを聞いていただける可能性があるというのは、とても良いことだと思いました。
それが弊社のことを知っていただくきっかけにもなると思いますし、どこまでプラスに作用するかは分かりませんが、少なくともマイナスになることはないはずです。そういう意味でも、非常に良い機会だと感じました。
人に見られる立場になると、自然と身だしなみにも気を配るようになりますし、『ちゃんと小綺麗にしておかないといけないな』と思います。
安い話かもしれませんが、そうした外見や身だしなみも、信頼をつくる要素の一つだと思うので(笑)
このホームページを見てくださる方に一言
もし出演するかどうか迷っている方がいらっしゃるのであれば、一度出てみたらいいんじゃないかと思います。選択肢があるのであれば、挑戦してみるのも良いことですよ。自分の考えを、不特定多数の方に聞いてもらえる機会というのは、なかなかありませんから。
私自身も、やはり会社のことを知ってもらうためという気持ちが大きいですね。」
また、インタビューを通して大阪の企業について感じた印象について
「大阪というと、以前は“にぎやかで少し騒がしい街”というイメージがありました。でも実際に企業の方々とお話ししてみると、従業員や人との関わりを大切にされている会社が多くて、印象が大きく変わりました。
率直に意見を言ってくださる方も多く、コミュニケーションが取りやすいと感じます。そうした大阪の企業文化の良さが、この番組を通して見ている方にも伝わっていけば嬉しいですね。