限界集落化が進む故郷の里山を守り、都市部へ安心安全な自然農法の仕組みを提供する取り組みを展開する株式会社JPE。本記事では代表の岡田富美一氏に、事業内容や理念、メディア出演での裏話や今後の展望について話を伺いました。
自然資源の循環と還元で実現するWin-Winの地域再生
――現在の事業内容について教えてください。
現在メインで推進しているのは、温室機能が付いた「箱畑」という製品の販売です。家庭用プランターより一回り大きく、農業用温室よりも小さい絶妙なサイズ感を狙って展開を進めています。単なるハードウェアとしての温室を届けるだけでなく、無肥料・無農薬で野菜を育てる「自然農法」の仕組みそのものをセットでお客さまへ提案できるよう取り組んでいます。
――会社として大切にしている考え方や理念をお聞かせください。
創業の大きな動機は、地元の地域再生にあります。私の生家がある奈良県生駒市の山あいの集落は、24戸あった家の半分が空き家となり、高齢化が進む限界集落になりつつあります。手入れをしなければ荒廃してしまう里山の自然環境を適切に管理・活用し、そこで得た利益を地元へ還元する仕組みを目指しています。
私のようなアクティブシニアの雇用を生み出して生活環境を改善しつつ、山で出た自然資材を都市部へ提供する。地域と都市部の双方にメリットが生まれる、Win-Winの仕組みをつくることを大切にしています。
長年のネットワークと地域資源が生む独自の価値
――御社ならではの強みや特徴はどこにありますか。
前職の上場企業で42年間務めた中で培った人間関係や取引先との強いネットワークです。「箱畑」は韓国の取引先に設計・製造を依頼し、中国の工場で生産することで大幅なコストダウンと迅速なレスポンスを実現しています。
また、生まれ育った地元の山には豊富な自然資源があります。ボランティアで実施している道の草刈りや山林整備で発生する枯葉や腐葉土、もみがらなどを資材として商品化できる点や、奈良県で「菌ちゃん農法」という自然農法を広めている方々と連携しながら取り組める点も独自の強みです。
――特に力を入れている商材やサービスについて教えてください。
駐車場1台分という1メートル×4メートルのスペースで、本格的な自然農法ができるキットに力を入れています。家庭用プランターでの野菜作りを経験し、次のステップへ進みたい一戸建て住宅の方向けの製品です。
都市部では「落ち葉20キロ」や「腐葉土」「枯れ木」といった自然資材を自力で集めるのが困難です。そこで、里山整備の過程で生じた資材を袋詰めして都市部のユーザーへ提供することで、誰もが手軽に本格的な自然農法を始められる環境を整えています。
メディア出演がもたらした共演者との共創と新たな事業
――番組「For JAPAN」への出演を検討されたきっかけや目的は何でしたか。
一番は「テレビの現場を見てみたい」というシンプルな興味と好奇心でした。迷わず参加を決めて、まずはその空間を楽しみたいと考えたのがきっかけです。
また、メディアを通じて自社の取り組みや自然農法の魅力を広く発信したいという思いもありました。食料問題を考えるうえでも意義のある自然農法を普及させ、将来的に他の大手メディアやビジネス番組にも取り上げられるようなPRの足がかりにしたいという期待もありました。
――実際の収録現場に参加されて印象に残っていることはありますか。
MCを務める古舘伊知郎さんの巧みな進行とプロフェッショナリズムには、非常に感銘を受けました。また、出演者同士の交流が生まれたことも印象に残っています。
収録現場で近くに座っていた役者の方と意気投合し、後日、ベトナム人の秘書の方と一緒に私の地元まで遊びに来てくださったんです。そのときは一緒に山へ入り、カブトムシやクワガタ捕りを楽しみました。
そこからさらに親交が深まり、現在はイベント現場向けに、トイレや休憩所を備えた「トレーラーハウス」のレンタル事業を共同で企画しています。番組への出演をきっかけに生まれたご縁が、新たなビジネスにもつながっています。
食の安全保障と次世代への事業継承を見据えた展望
――今後の事業展開や解決していきたい課題について教えてください。
まずはサンプルを設置して自社でテスト検証を進めつつ、地域再生の取り組みに参加してくれるメンバーや拠点を増やしていきたいです。関東エリアでのサンプル設置協力や、定年退職した地元の友人を巻き込んだ営業・案内態勢など、周りを巻き込みながら仕組みを広げる計画です。
私自身が66歳ということもあり、若い世代を社内に迎え入れて「箱畑」「トレーラーハウス」「機械部品販売」という3つの事業軸をそれぞれ後継者へスムーズに継承していける体制づくりにも注力しています。
――社会に対してどのような価値を提供していきたいとお考えですか。
日本のカロリーベース食料自給率は38%にとどまり、化学肥料や原材料の多くを海外輸入に依存している現状があります。この食の安全保障という大きな課題に対し、農家任せにするのではなく、一人ひとりが自宅でわずかでも自給自足を行う意識を持つことが重要だと考えています。
里山と都市部の間にある緩衝地帯を手入れして環境を整え、自然の恵みを活用する。この取り組みは食料問題の解決だけでなく、里山の荒廃を防ぎ、アクティブシニアの生きがいを生み出すことにもつながると考えています。
――最後に、記事をご覧になっている読者の方々へメッセージをお願いします。
私のような60代の年齢からでも、新しい挑戦やビジネスの立ち上げは十分に可能です。
ぜひ同世代のアクティブシニアの皆さんも恐れずに一歩を踏み出し、これからの社会をより良くするための挑戦を続けてほしいと思います。