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大阪ラセン管工業株式会社の代表取締役社長 小泉 星児が伝えたい思い「悩む時間があるなら根拠を探す」

Interview

“日本の未来を創る本質的な気づきを”をテーマに発信しているFor JAPANプロジェクト。
代表インタビューを通して、テレビやYouTubeでは紹介し切れないお話を深掘りしていきます。
今回は、大阪ラセン管工業株式会社の小泉 星児代表取締役社長にインタビューしました。

「悩む時間があるなら根拠を探す」

厳格で有名だった祖母が教えてくれたこと

この会社は、今年で創業111年を迎える会社です。私は6代目の社長にあたるのですが、昭和30年くらいからは、長く祖母が社長として経営をしていました。

その祖母は、大阪や地元芦屋で有名なほど怖い人でした。やはり当時、女性の社長は非常にめずらしかったでしょうから、それほどの迫力がないと務まらなかったのかもしれませんね。だからなのか、私は人に対して緊張するということがほとんどありません。祖母より怖い人を見たことがないですから。特にお年寄りの方にはまったく人見知りしませんので、かわいがってもらえることも多いです。

そんな祖母ですが、私が本当に小さい頃から、仕事の話を聞かせてくれました。例えば、手形の決済を見ながら、「回し手形が来たら、こんなことに気を付けないといけないよ」ということを、小学生の私に教えてくれていたんです。正直その頃は、あまり意味がわかっていませんでしたが、今経営をしていて、「これは注意しないといけない」とすぐに気づけるのは、祖母の教えのおかげだと思います。

学生時代の巻貝の研究が今に生きる

学生時代は、高校の頃から淡水の巻貝の研究に力を入れていました。なぜ、「巻貝なのか」と思われるかもしれません。それは高校の先生の「世の中でトップを取ろうと思うなら、めちゃくちゃ苦労してコツコツやるか、人がやったことのないことをするしかない」という言葉に影響を受けたから。

私が研究することにした巻貝は、よく川に生息している、あの貝です。食べられるわけでも、ペットとして飼うわけでもない貝なので、研究対象としては人気がありませんでした。だからこそ、何でも「新しい発見」になったのです。

この生物の研究を通して、学んだことがあります。それは、常に「最悪の想定」をしておくこと。物理や化学と違って、生き物の研究では、最悪全滅してしまうことがあるんですよね。でも、最初から想定しておけば、そんな事態も「想定内」の出来事になります。この思想は会社の「BCP策定」にも役立っています。

大変だったのは、阪神淡路大震災と台風

研究に力を入れていた高校時代ですが、人生で一番大変だったのもその時期。高校1年生のときに阪神淡路大震災で自宅が全壊し、学校もつぶれてしまったからです。しばらく大阪に避難したあとは尼崎に仮住まいをして、地元に戻るまでに3年ぐらいかかりました。その頃の経験がきっかけで、「備えないといけない」という気持ちは人一倍あります。それも、防災・災害対策に重点を置いた、BCPを重視した運営につながっていますね。

人生で2度目のピンチは、2018年に大阪に上陸した台風21号の影響で、大阪の本社工場がつぶれてしまったことです。具体的には、工場の屋根が3分の2くらいと、梁までも飛ぶ被害が出ました。会社最大の危機だったのですが、従業員を集めて「会社は大丈夫だよ」と話して、安心してもらうようにしましたね。あとは、とにかく初動を早くして、仕事に穴を開けないように努めました。

大変な出来事でしたが、今考えると、工場を無理やりにでも建て替えができたのはよかったのかもしれません。木造で築80年以上経つ工場だったのでどこかでしなければ、という思いはずっとありましたので。

社長になる前に開発した製品が、宇宙ステーションに

社長に就任する前になりますが、2012年頃から2014年にかけて、「ワームフリーフレックス」というチューブの開発を主導しました。会社の倉庫にころがっていた「とても柔らかい試作チューブ」を、ラインアップしてみたらどうかと考えたのです。今では国際宇宙ステーションの配管にも使われています。

やはり世襲の会社ですと、従業員の皆さんは「急に社長の息子が継ぐなんて、会社は大丈夫だろうか?」と不安になることもあると思うんです。ただ、私の場合は、35歳で社長を継いだのですが、社長になる前に「ワームフリーフレックス」の開発をしていたこともあって、安心して迎え入れてもらえたのかな、と感じています。

開発といえば、弊社には「駆け込み寺」としての役割もあります。他の会社では「できない」と言われたので、助けてほしいという依頼が多く寄せられるからです。事実、他ではできないけれど、うちならできるというアイテムはいくつかありますね。その理由は、「新しいものを開発しよう」という意識が、他社より強い会社だったからだと思っています。もちろん、その意識は今も引き継がれていますね。そのような技術力があるからこそ、ロケットの仕事など、「地味にかっこいい仕事」ができるところも、この会社の魅力かもしれませんね。

国内回帰で日本を盛り上げたい

実は、会社の転機が2023年4月にありました。中国北京での合弁事業を解消して、株式をすべて譲渡したのです。28年続いてきた中国での事業から撤退した形です。

「何かをやめる」ということには、マイナスのイメージを持たれる方もいるかもしれません。しかし、高品質・高付加価値のものを「日本から国内はもちろん世界中に届けたい」、そういう思いで国内回帰しましたので、ポジティブな意味合いでの決断です。今後は、一切海外の製造拠点は持たないで、「メイドインジャパンに注力」したいと考えています。

このような大きな決断に踏み切るためには、データ・数字が必要不可欠です。短絡的に考えて、勢いで行動してはいけません。根拠がないと、行動してはいけないのです。その根拠は、ぶ厚ければ分厚いほどいい。

よく「どんなお悩みがありますか?」と聞かれるのですが、私は「悩みません」とお答えしています。悩む時間は無駄だと思っているのです。悩む暇があるなら、とにかく情報収集したいと考えています。

会社概要

法人名:大阪ラセン管工業株式会社
代表者名:小泉 星児
企業ホームページ:https://www.ork.co.jp
所在地:大阪市西淀川区姫里3-12-33
事業内容:金属製フレキシブルチューブ、ベローズ式伸縮継手の設計・製造及び販売

For JAPANプロジェクトとは

For JAPANプロジェクトとは、10年後20年後の日本の未来の担い手である20代にむけて、日本の未来を創る”本質的な気づき”を。をテーマに様々なコンテンツを通し情報発信を行っています。 参画された【50人の社長】というレンズを通して、経験に基づく本質的な考え方や情報を学び、動き出すきっかけを与え”日本の未来を創るプロジェクト”全国放送『For JAPAN ‐日本の未来がココに‐』(BS11)や、YouTubeチャンネル『For JAPAN ‐日本の未来がココに‐』など様々なコンテンツで社長たちが徹底討論。

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